エコハウス大賞シンポジウム

1/28はエコハウス大賞シンポジウムが開催されました。2018年のエコハウス大賞受賞者である私とオガスタ相模さんは基調講演の大役を仰せつかりました。

私の講演の中身は、これからのエコハウスです。HEAT20G2、耐震等級3が当たり前の時代になると、建築はいよいよ「建築としての魅力」が問われるようになってきます。ところが、外付けブラインドがついたZEH 片流れ箱型住宅に代表されるように、最近の省エネ住宅は性能だけが目的化し、「建築的な魅力」から遠ざかるような設計がされているのではないか。 数値目標が達成された後は、古き良き時代の名建築や伝統建築に倣い、屋根や中間領域、つまり内と外との境界部をまず設計すべきなのではないか。そして、境界部を魅力的にデザインするためには、間取り先行の設計の手順を根本的に見直す必要があるのではないか、というお話をさせていただきました。

一方相模さんは、ビルダーズ木藤編集長のリクエストを受け、設計事務所とのコラボをテーマにお話しされました。

オガスタは私以外にも複数の建築家とコラボしてきておりますが、都度、その建築家から技術やデザインを吸収しながらも、いつも「新潟らしさ」「オガスタらしさ」を守りながら日々進化してきました。
オガスタのコラボは、有名建築家のスタイルをそのまま利用、工務店が技術性能おさまりのバックアップをするという下請け的な関係のコラボとは全く違います。 建築家が構法や温熱計算に口をだすこともあるし、 相模さんが経営者、温熱の技術者として、建築家にアドバイスすることもあります。床下エアコンや階間エアコンでは相模さんは第一人者の一人、建築家もコラボするとなぜか出世するということで、コラボしたい工務店ナンバーワンになりつつあります。

オガスタの真似を全国の工務店がそう簡単にできるとは思いませんが、相模さんの話をきっかけにコラボの動きが加速すると面白いですね。
てなことで、この日はこの後、審査員の先生方の講演があり、懇親会の後、ご近所オゾンと地下の杵屋で 楽しく飲んで解散となりました。エコハウス大賞は今回で終わりとのことですが、建築知識ビルダーズでは次なる企画も検討中のようです。期待しましょう。

「5人の先生が教える一生幸せなエコハウスのつくりかた」にエコハウス大賞の新潟K邸掲載

エクスナレッジのムック「一生幸せなエコハウスのつくりかた」にエコハウス大賞の新潟K邸掲載されました。この本は歴代のエコハウス大賞受賞作と、審査員の先生方の考えをまとめた本。この本を読めば、日本の「エコハウス」の最前線がわかります。しかし、こういうふうにダイジェストでまとめて頂いたものを見ると、デザインと性能の両立は、どう考えても、まだ道半ば。エコハウス大賞はずっと続けるべきじゃないのと思いますが (ビルダーズでやるのは今回が今年が最後という噂です) 、皆さんはどう思われますか?

昨年エコハウス大賞を受賞した新潟K邸は12ページにわたって、たっぷり紹介いただいております。ぜひ書店にて手に取っていただければと思います。1200円と激安なので、プロアマ問わずお勧めです。

建築知識ベルックスの記事


先日、トップライトメーカー、ベルックスに行ってきたんですが、その模様が、最新号の建築知識で記事になっております。 併せて、エコハウス大賞の新潟K邸のトップライトもご紹介いただいております。
ベルックスに行った目的は新製品モックアップの見学。この新製品は勾配ゼロでも設置できるそうです。 フィックスで開けられないのですが、枠無しですっきりと納まりますので、いろいろ活用できそうです。

住宅デザインの手帖

ご案内が遅れましたが、エクスナレッジより2/2発売の書籍「住宅デザインの手帖」売れ行き好調なようです。世田谷M邸、善福寺U邸、新潟K邸、町田K邸、横浜S邸など掲載いただいてます。屋根断面は、充填野地1枚、充填野地2枚、外張り野地2枚の3事例が掲載されてます。

この本は工務店・設計事務所の専門家御用達雑誌「建築知識」を書籍化したもの。「建築知識」は元々小さな版に情報詰め込むので写真は小さめですが、今回版型が A4サイズに大きくなったことに伴い、図面や写真も大きくなり、レイアウトも大幅に変わり、一般の方でも興味深く読めるとてもありがたい本に変わっています。デザインや編集は大事ですね。 ぜひご覧ください。

善福寺U邸。梁を寝かして作った広幅スケルトン準耐火階段について解説。
世田谷S邸 ロイヤルのレールを使った玄関-脱衣の収納について解説。
新潟K邸は飛行機の羽根のような構造をした充填断熱の屋根断面について解説。
町田K邸は垂木みせ外張り断熱について解説。

建築知識ビルダーズNo.36発売。表紙はエコハウス大賞の新潟K邸


建築知識ビルダーズNo.36発売されました。表紙はアイプラスアイ、オーガニックスタジオ新潟のコラボ、エコハウス大賞受賞の新潟K邸です。


表紙のグラフィカルな構図とは対照的に、中の記事は雨宮カメラマンのしっとりした美しい写真と木藤さんの美しい文章で構成されています。こんな家住んでみたいですよね、笑。
オガスタさんの標準床下エアコン納まりや、設計者が最も恐れる、東大の前先生のサーモグラフィー写真も載ってます。


ちなみに表紙の写真は寝室で、色は緑に振れてますけど、本当の色はこんな感じです。非常に微妙な色合いで、皆さんのモニターだとどう見えてるかわかりませんが、ラワンの色との親和性は抜群。設計者自らベンジャミンムーアで1缶買って大判の見本を作成、現場の光で確認して決めた自慢の色です。

是非書店にてお手にとって頂ければ幸いです。

エコハウス大賞公開審査レポート

エコハウス大賞のHP内に、i+i設計事務所、オーガニックスタジオ新潟がグランプリを獲得した、公開審査の詳細レポートがアップされました。読むだけでその場にいたんじゃないかと錯覚してしまうくらいの臨場感あふれる素晴らしいレポートです。

「エコハウスを技術性能だけで見た場合、どうしても私たちがテーマにした中間領域や風土性は枠の外に考えられる。しかし、それをあえて尊重することで古い民家が持っているような数値にあらわれない魅力や価値を建物のなかにあらわせた」という、私がプレゼンで一番伝えたかった部分は、省略なしでそのまま書いて頂きました。

三澤先生「天井の杉板にトップライトからの光がたくさん集まるので、まろやかな空間ができていて素敵・・・」、前先生「最優秀賞の「グランドピアノのある家」は、性能、意匠を含めてあらゆる意味で完璧に近いものでした。・・・」、
松尾先生「最優秀賞の「グランドピアノのある家」は、一般的な敷地を読み解き方からかけ離れて、あえて今まで見たことのない空間に、しかも高いレベルで解いたことに価値を感じました。・・・」、などなど、ほとんどの審査員の先生方に高い評価いただけたことがわかります。

飯塚のグダグダの優勝コメントも3割増しでうまくまとめていただいてます、笑。ぜひご覧いただければと思います。


大賞受賞の記念写真。左から、松尾審査委員、前審査員、飯塚、相模さん、三澤審査員、西方審査員、伊礼審査委員長です。

2018日本エコハウス大賞受賞


おかげさまで、オガスタコラボ第二弾=新潟K邸=グランドピアノのある家、2018年日本エコハウス大賞(新築部門最優秀賞)受賞しました。Kさんおめでとうございます。写真は左から、飯塚、オガスタ相模社長、監督の小林秀さんです。
パワポ資料、会場にいらっしゃれなかった皆様用に下記に全文公開しますのでご覧ください。



私たちアイプラスアイ、オガスタのチームは、内部と外部のあいだの空間、いわゆる中間領域をテーマにして設計しました。


敷地は西側に水路が流れる、新潟市内の整形地です。お施主さんの要望は、リビングにグランドピアノを置ける暖かい家というシンプルなものでした。


ピアノ置くので一階平面は5間四方とやや大きめに設定しましたが、階高・軒高を極端に低くした大屋根の構成を採用し、外皮面積を総2階並の水準におさえました。さらに外皮面積を節約して中間領域を生み出しました。


外観は新潟の風土を強く意識しました。大屋根の勾配はしっかりとり、家の四方に軒を出しました。落雪を気にせず家に出入りできるよう屋根は妻入りに。敷地西側にある水路に自然に大部分の雪が落ちるように、屋根は非対称な切妻を採用しました。新潟の古い民家に習って、外壁は杉にしました。


家の南北中間領域は取って付けた感が出ないようボリュームをえぐってつくりました。こちらの南の中間領域は、高い位置に屋根をかけ、奥行きをたっぷり取りながらも、冬季の日射を遮らないようにしています。


東西北の窓を最小限にするかわりに、南はたくさんの窓を配置しています。窓の決定に際しては、スケッチアップを使ってシミュレーションを行い、隣家の影ができにくい東寄りに窓を集中させ日射取得を増やしています。また夏場の対策として庇を出した上で、窓は引違にし、すだれをぶら下げやすいようにしています。


1階南面はステンレスのブレースを使って端から端まですべて窓にし、2階は光を天井面に反射させて明るい室内を実現しました。中間領域のデッキとフラットになるベンチの下には床下エアコンが設置されています。


平面です。ピアノ上部の吹抜けで室内をほぼワンルームにしてます。さらに端から端まで見通せる抜けや、行き止まりのない回遊動線を確保することで、広がりを演出しています。


矩計図です。断熱は壁210mm屋根310mmでUA値は0.28、Q値は0.96です。垂木は特殊な金物で火打ちや厚物合板を使わずに1.34倍の倍率を出し、耐震等級2を実現しました。


ワンルームになっているので、どこからでもピアノが眺められます。天井最頂部にはトップライトを設置しました。教会のような象徴的な光で上昇感を出しています。またこれは夏の熱気抜きにもなっています。


すのこ状の勾配天井は、音の拡散と吸音を狙ったものです。きちんと吸音させるため、防湿層は断熱材の厚み1:2の位置に入れました。


黒いピアノはインテリアで非常に目立ちます。それを緩和するようシークエンスの要所に暗色を配し、リズムをつくっています。


南の庭はグランドピアノの線形を持った園路が特徴です。


ホームズくんを使って室温の動的シミュレーションも行っています。これはリビングの室温変動ですが、床下と吹き抜けの2台のエアコンで、20度から28度をキープできています。またその時の冷暖房費は一年で28500円程度となりました。


最後にまとめですが、エコハウスを技術・性能の側面から見ると、私たちがテーマにした中間領域、風土性といったキーワードは、枠の外にはみ出してしまうんですが、今回、あえて、そのはみ出した色々なものに注目することで、新潟の古民家が持っているような魅力・価値を家に付与することができたんじゃないかと思います。

「グランドピアノのある家」日本エコハウス大賞 大賞候補ノミネート

i+i設計事務所とオガスタ新潟とのコラボ、新潟市中野山K邸=「グランドピアノのある家」が、日本エコハウス大賞の大賞候補4点のうちの一つに選ばれました。


K邸はレーモンドのカニングハム邸のような断面をした住宅です。
UA値は0.28。HEAT20だと新潟のG2は0.34だから、それを上回る性能です(数字が小さいほど高性能)。サッシは基本APW430ダブルLOWEトリプルガラス、南の引違はAPW330LOWE複層ガラス、壁は全方位断熱付き。天井断熱は高性能グラスウールとウッドファイバー100㎜の組み合わせ。防湿層は両者の中間に入っており、すのこ天井の裏のウッドファイバーは吸音材としても機能。音の響き過ぎを防止します。


エコ住宅というものは、表面積を小さく抑えるため、箱型の単純なフォルムになりがちなんですが、内と外のあいだに「間」をとること=中間領域をつくることは魅力的な『建築』の絶対条件。2階の屋根をふき下ろした形で表面積を節約、その一部を凹ませ、幅の広い大階段を設けることで、たっぷりと奥行きのある中間領域をつくりだしています。窓のすぐ上に深い軒を出すと冬期日射は減りますが、この部分の屋根は高いところにあるので、冬期の日射も問題なしです。

最終のプレゼンテーションと授賞式は11/20(火曜)14:30~16:50@東京ビッグサイトです。オガスタからは相模社長、管理建築士阿部さん、K邸担当小林秀監督東京入り予定。

なお、この公開プレゼンテーション+授賞式はジャパンホームショーの特設講演会のひとつ。https://www.jma.or.jp/homeshow/seminar/program.html
審査員の伊礼さん、西方さん、三澤さん、松尾さん、前さんの他に、堀部さんや森みわさんやもいらっしゃるという噂。こんな超豪華メンバーにも関わらず、定員はたったの70名。事前登録制のようですから、ご興味ある方は早めに登録し、ジャパンホームショーの入場券も入手した方がいいいかもです。

新潟K邸大工工事大詰め

オガスタコラボ第二弾、新潟K邸は月末の木完にむけて、大工工事大詰めです。秀監督に写真を送っていただきましたのでご紹介。


外部は足場外れました。北側のファサードは2階ウッドロングエコ、1階焼きっぱなし焼杉のツートンで浮遊感を出しています。柱は黒くなると保護色で寂しいので焦げ茶系の塗装にしました。


リビングからダイニング(1階)子供室(2階)を見たところ。天井はすのこ状の吸音天井です。屋根の勾配方向に材を流してるのが設計者のこだわり。上昇感が生まれますからね。


壁と天井が幾何学的に噛み合います。庭側の窓際ベンチは外部のデッキを同レベルで繋がります。アイプラスアイの定番手法。


トップライトまわりの多面体天井部分。光をうまく回り込ませる工夫です。図面はCGで検討しながら頑張ればかけるけど、材料には厚みがあるので、こんなふうに稜線が一点に集まるように施工するのはめちゃくちゃ大変なはず。素晴らしいですね。


壁から片持の階段もできました。蹴込み板下部をしゃくって、段板を差し込んでいるんですが・・・


蹴込み板上部は、蟻状のななめ勾配がついてます。荷重を受けて蹴込み板が回転しようとすると段板に引っ掛かかる=段板が引張り材になるイメージですかね。このように、見えるところも見えないところも、スーパー監督とスーパー大工さんのおかげで、とても素晴らしい仕上がりになっております。

新潟K邸階段詳細


オガスタコラボパート2、新潟K邸は基礎工事が始まって、プレカット承認が丁度終わったところです。

オガスタさんが社員旅行に行ってる隙に、飯塚は階段詳細検討中。壁から片持ち構造になるので、できるだけ頑丈になるように壁の中の下地の入れ方まで考えました。壁の中は見えなくなるので、基本現場サイドにお任せですが、絵があれば監督と大工さんが打ち合わせる時使えるはずですからね。

蹴込み板根元はパッキン材挟んで柱・間柱にビス止め、蹴込み板小口は厚物合板の耐力壁裏からビス止め補強します。踏み板も間柱材でサンドイッチ。回り段部分も、集成材で梁から吊る+壁からの片持ちで不安のないように。手すりもCGで納まり確認しました。


図面はこんな感じ。いつもどおり、寸法おさえ、集成材の向き、手すり端部のディテールその他、この一枚の図面ですべてがわかるようになっています。