工務店設計塾 第3回

工務店設計塾第三回は2021年1月/21、22無事終了。

今回のテーマは「構造と断熱」です。演習課題は自社プロトタイプとしての販売型モデルハウスということにしました。販売型のモデルハウス(または引き渡しを一定期間遅らせ、その間工務店がモデルハウスとして借りるショーハウス)は、住まい手側も通常より安価に家を手に入れられるということで、工務店顧客双方が利益を得られるビジネスモデルです。オーガニックスタジオ新潟など、先進的な工務店はこの手法をよく採用しています。

道路付けは南で西に児童公園のある敷地ということにしましたが、敷地は参加者共通でなく、参加者の会社から30分以内の住宅地という設定。なので地域性を踏まえたプログラムで各自提案いただきました。

鈴木建築 伊藤さん。児童公園の広がりを評価し、南西側に開く構成にしていますが、リビング上部吹き抜けからの採光を考慮しているので、日当たりの良くない敷地でも建設可能なモデルになっています。階高軒高は限界まで下げる、下屋の奥行きは集熱とたまり感を同時に考慮、上下階を庇で分節、平屋プロポーションをつくる・・・などなど、講義内容を完璧に反映したプランになっています。脱衣室からデッキのつながりもいいですね。玄関ドアを既製品で書いてしまった(笑)以外は、プロトタイプとしてほぼ文句のつけようがない案になってるのではないでしょうか。

リボーン 塩原さん。リボーンはカーポート要望の多い長野県の会社です。アルミのかっこ悪いカーポート作るくらいなら、建築工事でガレージを作ってしまえということで、塩原さんは母屋に平屋のガレージ棟を併設した分棟形式の提案でまとめました。プロトタイプは総二階の出っ張り引っ込みのない、おとなしいボリュームになることが多いわけですが、別棟を作ることで、その単調さを回避、結果的に中庭という中間領域を生み出しています。ガレージ棟は車をどければ、中庭と一体となっていろいろな半屋外イベントにも対応できそう。
母屋の方は冬期集熱がうまくできそうな、南に窓の多い構成。付加断熱の本格的な超高断熱の仕組みも考えた、とても楽しげで情熱的な提案になっています。

相羽建設 中村さん。今回、すでに会社がプロトタイプ持ってる人は、自社プロトタイプと違う提案してくださいということにしました。相羽さんは「木造ドミノ」という長方形総二階のモデルハウス持っているため、中村さんは普段やらないL型の構成でまとめてくれました。外観は片流れのシンプルなボリュームをL型に折った形。窓は同型のものを繰り返す横ライン強調型でうまくまとめています。玄関位置をあえて端部にとったので、廊下的な空間が多くなってしまいましたが、玄関位置を中央付近に持ってきて、L型の付け根の構造に配慮すると、間取りはぐっと良くなりそうな感じです。

ニコハウス設計室 鈴木さん。鈴木さんは毎度、飯塚流の設計法を踏まえた、楽しげな計画をしてくれます。今回は、妻入りの大屋根の構成でまとめていただきました。パッシブハウスの設定で、南は凹凸なし外付けブラインド付きの大開口。公園側には土間やデッキの空間がある楽しけな中間領域が広々とってあります。日射遮蔽や取得を考慮すると平入りが基本になりますが、妻入りとしてPRするのはモデルハウスとして良いと思います。2階の間取りは、小屋裏がうまく利用できていないところや廊下が出ちゃったところがいまいちですが、1階はなかなか楽しげにできているということで、飯塚賞とさせていただきました。

木の香前川、川瀬さん。木の香は富山の会社です。ニーズの高い雪対策を、川瀬さんは2階リビングのピロティ形式のガレージで解きました。2階リビングからは南東方向に立山連峰のビスタ望めるということで、積極的に開口しています。プランは中央に階段と玄関をおいた明快な構成。敷地の読み込みと課題の捉え方が適切ということで鈴木賞を受賞されました。

その他のみなさんも、3回目ということで確実に進化していますので次回も楽しみです。

工務店設計塾 第2回

2020年12月工務店設計塾第二回無事終了。

今回の座学のテーマは「形態と窓」、ついでに私の方からは中間領域の話をして、鈴木先生には田の字平面の設計手法のお話をしていただきました。
前回の演習課題は厳し目で皆さんストレス溜まったような気がしたので、今回はどーんと15m角の南東の角地に立つデザイナーの家ということにしてみました。周囲から見られる角地で、施主からも周囲の家とは一風違う家を求められているという設定です。また、広い敷地を楽しめる6坪程度の中間領域を設ける条件もついています。

相羽建設 中村さん。伊礼智さんや小泉誠さんのモデルハウスを持つスーパー工務店勤務の、中村さんは、相羽スタイルを完全にマスターしていることは1っ回目の課題でわかったので、会社のスタイルと異なったものを設計するということを毎度課題させて頂いてます。今回の中村さんの案は広い敷地を生かした、4つの庭のある平屋コートハウスの提案でした。4つの庭にこだわりすぎて、南西角がちょっと窮屈な感じがしますが、南東の屋根が抜けたコート部分は非常に楽しそうにできていますし、立面も格好良くまとまっています。短時間でいつもやってることと全く違う案をうまくまとめあげたということで、飯塚賞とさせていただきました。

リボーン 塩原さん。堀部さんの鎌倉山の集会所を彷彿させる、軒の低い平屋の提案です。角を45度に落とした八角形の平面とするという独自の方法で角部分に中間領域をつくり出しました。座学のレクチャーで説明した通りの、水平性を強調する軒の低い平屋のフォルム、は実際このまま作っても格好良くまとまるはず。中央にあえて収納を設けるのは、光の取り込み方としては面白いけど、広がり感がいまいちなので、収納は普通に周りの部屋に分散したほうがいいのかなとは思います。トータルなバランスの良さが評価され鈴木賞を受賞されました。

鈴木建築 伊藤さん。非常に完成度の高い提案です。角地ということで、南東に向かうL型の平面とし、全体を平屋と2階の組み合わせで解いた案です。池辺陽さんの石津邸のように西側に細長くでた腕に沿って、室内まで庭の景色を引き込むような計画になっています。塀を回したことで角地を捨てちゃってるように見えるところが残念なところ。バラガンやミースのみたいに隙間を開けながら壁を回せは、庭をもっとおおらかに取り込む事もできたかもしれません。

オーパススタイル寺内さん。急勾配の象徴的な大屋根で角地の風景を作る提案です。屋根から覗く窓の表情などは、とても独特な面白い表情をつくっています。寺内さんは、部分に楽しげなストーリー、エピソードを盛り込むことが非常にお上手なんですが、部分から全体へという設計スタイルなんで、今回は屋根が3ブロックに別れてしまいました。計画もややこじんまりしてしまっているので、方形の大屋根ではなく、寄棟の大屋根にしてまとめれば、とても面白い提案になったんじゃないかと思います。

アシストプラスアルファ武部さん。片流れ屋根総二階の四周に下屋を回した住宅です。南に寄せた配置はちょっと変なので、北寄せ配置が自然です。あと、比較的急勾配の下屋を回した形なんで、2階建て部分はやはり急勾配の寄棟にしたほうが、形態的なまとまりが出るような気がします。せっかく四周を下屋が回る構成なのだから、玄関部分もちゃんと下屋を回したほうが良かったと思います。下屋空間が楽しそうにできてるだけに、いろいろ惜しい感じがしました。