名古屋T邸工事スタート

切妻のシンプルなボリュームに大きな庇をつけた構成の家、名古屋T邸の設計がまとまりました。敷地はひな壇上に造成されていた危険なブロック擁壁を取り壊し、東はRC擁壁を再築造、南は傾斜地の自然地形を再現しました。 外壁は緑の背景になるように焼杉に。
施工は新住協マスター会員、愛知県小牧市の「エンズホーム」です。 エンズホームはアウトドアブランド 、スノーピークの代理店でもあるのですが、今回のT邸はそんなエンズさんにぴったりの豊かな中間領域を持つ家にまとまっています。担当は棟梁兼監督の表野さん、サポートは庄司さんの予定です。

玄関はガデリウス。 2階の窓周りも同色系でまとめます。下屋の屋根は 中間領域と日射取得を両立する庇の形を考えました。 軒の出は南側掃き出し窓の前では90cm。東側、窓を外したところでは3.2mのたっぷりとした奥行きです。ボリュームがコンパクトで表面積が小さいので、UA値はHEAT20のG2を楽々クリア。床下エアコンもありますから、冬はとても暖かい家になりそうです。

今はただ土が広がる何もない敷地ですが、将来は豊かな地形のある雑木林にすることを目指します。

『カタチが決まるまで間取りを描くな』

現在発売中の建築知識ビルダーズの最新号、造園特集=「小さな庭のはじめかた」は売れ行き好調なようです。巻頭の阿部勤さんの自邸紹介、伊礼さん+荻野さんの「南与野の家」の10年前と現在のビフォーアフター、momohanayaさんの「小さな庭の超コスパ外構術」など見どころ満載の号となっております。

今号から「飯塚豊の『カタチが決まるまで間取りを描くな』」という連載が始まりました。
家づくりで建て主さんが最も興味を持つのは「 間取り」。敷地が決まると設計者がまず手を付けるのも「間取り」。ハウスメーカーであれば間取りが決まればコストもはじけるし、すぐ契約することも可能です。
でも、私はこの間取りの極端な偏重が、でたらめな街並みや楽しめない家ができてしまう主原因だと考えています。本当に魅力的な家を作ろうと思ったら、間取りの前に「考えておくべきこと」は沢山あります。この連載では実例写真とともに、その「 考えておくべきこと 」を具体的に解説していきます。
今回のテーマは「屋根」。ご主人がDIYで作り上げた前庭のある焼杉の逗子S邸を実例として紹介しています。ぜひご覧ください。

国立N邸今日の現場

国立N邸今日の現場。棟梁は家具の制作に入っています。2階ホール天井はツガ。 アッシュハギ板製の ロフト階段や、本棚もできました。正面のサッシは木製で、欄間には台形のサッシが入っています。

1階はツガの天井も張り終わっています。南の大窓は木製サッシ。東北のサッシメーカー、アルスの「夢まど」。

窓際のラウンジピットも完成。床はカーペットになります。養生されていて見えませんが、フローリングは岡崎製材のラスティカルアッシュ。

階段の左手、ラウンジピットの境は書斎カウンター。階段下はオーディオ機器置き場になっています。配管配線がごっちゃリ入ってますが、気密は貫通しないようにしました。こちらの階段もアッシュのハギ板です。

リビングダイニングまわりは、大空間に沢山の居場所を作るのを目標にしています。
ここは掘りごたつ形式の小上がりこもりスペース 。

気密試験も行いました。結果は文句なしの0.1 c㎡/㎡ 。
もともと今回施工をお願いしている夢建築工房は0.5c㎡/㎡保証なんですが、 さすがですね。

「伊賀の家」三重県初パッシブハウス認定

2019年のエコハウス・アワード意匠賞を受賞した、森大建地産とのコラボ「伊賀の家」が、ドイツパッシブハウス研究所の基準に適合した「パッシブハウス」に正式に認定されました(下記写真はデータベースのページのスキャン画像です)。

森大さんもi+iも、未来の住宅を先取りした「超」の付く高断熱エコ住宅は初めてで、プロジェクトスタート(旧ブログリンク)から認定取得まで3年半かかりましたが、 三重県初のパッシブハウス認定を頂き、ほっとしております。

私のような、どちらかと言えば意匠寄りの設計者でも、頑張ればパッシブハウス基準の住宅をつくれます (残念ながら、温熱の計算含めかなり頑張らないとだめかもですが、笑) 。これからは認定も国内で可能になってスピードアップするそうなので、全国のデザイン性能どっちも得意な設計事務所・工務店のみなさん、ぜひパッシブハウスに挑戦し、盛り上げていきましょう。

「新米建築士の教科書」増刷決定

2017年春初版の拙著「新米建築士の教科書」5回目の増刷が決定。今回は3000部の増刷で計2万冊となります。お読みいただいた皆様、ありがとうございます。

テレワーク中の自宅にて、あらてめて読み返すと2年間の執筆期間の苦労や編集者とのバトルが思い出され胃が痛くなりますが、新人教育の教材として使っていただいているハウスメーカーや工務店さんも多数あるようでうれしい限りです。
「新米建築士」というタイトルがついていますが、この本は、設計者の日常的な生活習慣のつけ方、情報収集の方法、設計の進め方、コンセプトメイクの方法なども網羅していますので、学生の皆さんが読んでも役に立つ本となっています。中でも「設計コンセプト」のつくり方のコーナーは、私が大学生の時から考えていたことをまとめたものなので、よくある「卒業設計本」より役立つ内容なんじゃないかと思ってますので、学校がなかなか始まらない大学生の皆さんも、この機会にぜひ読んでいただければと思います。

中国語版も出ています。よろしくお願いいたします。

津市I邸屋根外壁工事

森大、森社長から津I邸の現場写真送っていただきました。なかなかシャキッとできてます。今回外壁は付加断熱ネオマあるので、通気胴縁は柱間柱に合わせ、縦@455パネリード固定が無理がないかなということで、下見張りにしました。材料は地元「のじもく」さんのものです。というか、森大さんの場合、内装は30mm厚のスギフローリング含め全部のじもくさんという感じです。家具も集成やランバーコア合板できるだけ使わずに、「のじもくまのパネル」を活用します。

茅ヶ崎K+H邸大工工事

茅ヶ崎K+H邸行ってきました。大工工事がいろいろ進んでいます。最上階は勾配天井の省令準耐火用ボード、格子の施工が終了しました。格子は30*90@140程度です。

格子は固定部が見えないよう、先に梯子上に組み立ててから起こしていただいたようです。木天井との取り合いは、こんな風に丁寧にしゃくっていただいております。杉の源平が結構強いので塗装を検討中ですが、せっかくのしゃくりが生かせるように天井材に先行して塗装を検討中。

子世帯は色がばらけないように、塗装色は床のチークやオークを基準に色相・明度・彩度を調整しています。和室の畳は明度合わせてグレイのものを選んだんですが、なんかあんまりきれいじゃない気がしてきたので、ダイケン畳の新色サンプル取り寄せて再検討します。

2階はフローリング、壁ボードが終わっています。天井ボードはキッチンまわりを納めれば終了です。

和室小上がりもできました。下部は深いワゴン収納です。

1階です。天井ボード張り完了してます。新井棟梁は南側大窓サッシの枠付の最中でした。

国立N邸屋根GW吹込み350mm

3/26は国立N邸屋根グラスウール吹込み工事でした。飯塚は打ち合わせで行けなかったのですが脇屋が立ち会って写真撮ってきましたので、そのご報告です。
部材点数が多く複雑な和小屋の架構とは、この方式が一番相性がいいと思いますが、コストの問題もあってなかなか採用している工務店は少ないんですね。

吹込み前はこんな風に野縁にメッシュが張ってあります。この透けてる状態が意匠的には一番カッコいいかもですが、もちろんこのまま放置はできません。

メッシュに穴をあけてからホースを突っ込んでGWを充填していきます。

充填が終わったところです。グラスウールの密度は22kg/m3で断熱性能は0.038W/mKということで、壁などに使うマット状のグラスウールと同じ性能。厚みは景気よく350mm。それがダウンジャケット風に膨らんでて、とてもあったかそうですね。もう一発野縁を流してから、防湿フィルムや天井を張ります。

駐車場にはこんな車があって、ここからグラスウールを圧送します。

外壁の焼杉はほぼ終わってます。登梁側面は縦張りせずに、斜めなりに張るのは私のいつものこだわりです。平行四辺形の短い外壁がたくさん並ぶのは見苦しいし、施工も大変ですからね。

八景島K邸 実施設計まとめ中

八景島K邸は確認申請がほぼ終わり、4月末の地鎮祭および契約に向けて、解体などの準備中です。今日はインテリアを検討中です。

2階リビングからキッチン方向を見る。床はやや黒めのインドネシアチークで検討中。天井も木になってますが、そのままだと田舎っぽいので、淡いグレイとかにするのも良いでしょうかね。

リビングから和室方向を見たところ。畳はチークと明度の差が出過ぎないようにダイケンの畳表でグレイ色に。

キッチンはアイランド型で、面材はバーチ、天板はシゲル、引き出し金物はハーフェレ、食洗器はミーレ。 大工さんが枠組みつくり、建具屋さんが建具付け、塗装屋さんが色を付ける、いつもの青木さん仕様フルオーダーキッチンです。当初ロフト部分に設ける予定だったトップライトは、神奈川ルールでロフト面積の1/20になるとのことだったので、ダイニング上部に移動しました。

ダイニングからリビング方向を見たところ。食品庫経由で和室側に行けるようにしたので、動線は、DK、和室、リビングがぐるっと回遊してます。
屋根は24㎜の剛床ですが、中央の壁を棟木まで伸ばし、耐力壁線間距離を2間に押さえました。

キッチンからバルコニを見たところ。バルコニーは3畳。ここから花火が見られます。

和室から、リビングを見たところ。鴨居もう少し下げた方がいいですかね。

外観です。ウッドロングエコと焼杉の組み合わせ。チークの仲間の色として、軒天に柿色っぽい刺し色をすることを考えています。

i+iの住宅外観集 75軒分

グーグルフォトのアルバム「i+iの住宅外観集」に、うちで設計した住宅の外観まとめてみました。独立当初は四角いガルバのイメージが強いですが、最近は勾配屋根の木外壁の家が増えています。サッシはアルミ→アルミ樹脂複合→樹脂とむしろごつい方に変わってきているので、色を同化させて目立たせないようにしています。
世の中のほとんどの住宅は、間取りの結果として外観、立面があらわれてくることになるのですが、私は敷地の特性を考え、間取りを描く前に家のカタチを決めています。これは、内と外との境界面の作り方が建築にとって最も重要であると考えているからです。また、モダンなカオナシ建築は耐えられないので、「生き物」のような豊かな表情のある建築をつくることを常に目標にしています 。

津市F邸02案

森大建地産コラボ第三弾、津市F邸はじまりました。コーナーに木が生えた中間領域がある建築になります。

敷地は周囲にこんな感じで家が建っています。今のところ南側は平屋ですが、将来は2階建てになる可能性もあります。

そのため、建物の角を欠きとり、2階から取り入れた光を吹き抜けを介して下に落としてます。

吹き抜けの背中側にはこんな風に日差しが入ります。

名古屋T邸01案

新しいお仕事、名古屋K邸01案。
敷地の道路付けは東と南、つまり東南の角地で 日当たり良好です。「豊かな中間領域を持ったエコハウス」というテーマ を実現するのに最適な敷地。
建主さんは、耐震等級3、HEAT20G2程度の断熱という性能以外は特に強いご要望はないのですが、なんとなく2つのヴォリュームを組み合わせたような形がご希望ということで、01案は下屋付きの箱型住宅をご提案しました。

下屋は南側は半間、東側は一間半ほど軒を出しています。冬期の日射取得と軒下中間領域の守られ感を両立する形です。また、この庇は玄関ポーチを兼ね、西隣に建つアパートからの視線を遮るという、一石三鳥、一石四鳥の役割を担います。

南の軒の出をあえて半間に絞ったので、こんな風に冬場はたっぷりと日射しが入ります。小上がりの部分で日向ぼっこできますね。下屋付きで家の中央がいくらか暗くなるので、2階窓からの光を吹き抜けに落とし光を補う予定です。

エコハウス大賞シンポジウム

1/28はエコハウス大賞シンポジウムが開催されました。2018年のエコハウス大賞受賞者である私とオガスタ相模さんは基調講演の大役を仰せつかりました。

私の講演の中身は、これからのエコハウスです。HEAT20G2、耐震等級3が当たり前の時代になると、建築はいよいよ「建築としての魅力」が問われるようになってきます。ところが、外付けブラインドがついたZEH 片流れ箱型住宅に代表されるように、最近の省エネ住宅は性能だけが目的化し、「建築的な魅力」から遠ざかるような設計がされているのではないか。 数値目標が達成された後は、古き良き時代の名建築や伝統建築に倣い、屋根や中間領域、つまり内と外との境界部をまず設計すべきなのではないか。そして、境界部を魅力的にデザインするためには、間取り先行の設計の手順を根本的に見直す必要があるのではないか、というお話をさせていただきました。

一方相模さんは、ビルダーズ木藤編集長のリクエストを受け、設計事務所とのコラボをテーマにお話しされました。

オガスタは私以外にも複数の建築家とコラボしてきておりますが、都度、その建築家から技術やデザインを吸収しながらも、いつも「新潟らしさ」「オガスタらしさ」を守りながら日々進化してきました。
オガスタのコラボは、有名建築家のスタイルをそのまま利用、工務店が技術性能おさまりのバックアップをするという下請け的な関係のコラボとは全く違います。 建築家が構法や温熱計算に口をだすこともあるし、 相模さんが経営者、温熱の技術者として、建築家にアドバイスすることもあります。床下エアコンや階間エアコンでは相模さんは第一人者の一人、建築家もコラボするとなぜか出世するということで、コラボしたい工務店ナンバーワンになりつつあります。

オガスタの真似を全国の工務店がそう簡単にできるとは思いませんが、相模さんの話をきっかけにコラボの動きが加速すると面白いですね。
てなことで、この日はこの後、審査員の先生方の講演があり、懇親会の後、ご近所オゾンと地下の杵屋で 楽しく飲んで解散となりました。エコハウス大賞は今回で終わりとのことですが、建築知識ビルダーズでは次なる企画も検討中のようです。期待しましょう。

国立N邸付加断熱など

国立N邸、付加断熱周りの工事が粛々と進行中です。

室内側の可変調湿シートとは別に構造用面材=モイス面で一回気密取る仕様なので、モイスの配管貫通部も気密処理されています。モイスはパッキン挟んで躯体に止めています。下に置いてあるお布団みたいなのが、付加断熱用の高性能グラスウールです。

エアコン用貫通部の室内側はこんな感じ。配管出したりして結構力がかかるからでしょうか、四角い下地を入れてます。で隙間はウレタンで充填。

これは付加外側にウルトの黒い透湿防水シート張った後の状態。野地は2枚ですが、垂木部を切り欠きつつ、直上の野地の下にウルトを巻き上げるように張ってます。タッカー部はテープ処理。手間かかってます。

これはちょっと前の工程です。野地の直上にもウルトがあって、その上に通気胴縁、野地板という構成になっております。野地一層目軒先のところの野地表裏で、両方のウルトが出会い、フェイルセーフラインが完結する感じです。

木製サッシも搬入されました。これは主として2階に使う、ガデリウスの既製品のドレーキップ窓。南側の3枚の大きい窓はアルスの「夢まど」の片引きを使っています。